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会員生協探訪記 25

2011.7.24(日) 【自然派こうち】


夏休み親子平和学習会 「農家のおばちゃん 憲法とがぶり四つ」

コープ自然派こうちで憲法学習会があると聞いてお邪魔しました。講師の山本明紀さんは2010年に各地のお国ことばに訳した憲法前文集を出版した方で、コープ自然派の組合員さんです。白い割烹着に姉さんかぶりという「おばちゃん」のいで立ちの山本さんは、ニラ農家。イラク戦争のとき、自衛隊に入っている友人がイラクに派遣されると聞いてショックを受け、戦争が遠い国の出来事ではないと感じたそうです。そして、改憲の動き・・・。国民投票法ができて国民が憲法を変えることができるようになったけど、自分も周囲の友達も、みんな憲法のことをよく知らない。山本さんは、「こりゃいかん!と思って憲法前文を読んでみたがよくわからん、でも憲法は、『いつもそのことを考えながら生きてもいいくらいえいこと』を書いちゅうと直感的に思った」そうです。

憲法99条(憲法尊重擁護義務)を読んで、憲法は国民が国家に向かって「これを守れ」といっているものだということに気がついたという山本さんですが、「でも、どうやってこのことをみんなと分かち合おう?」と考えていて、ニラ畑で農作業中にひらめいたのが「お国ことばで訳してもらう」ということだったそうです。最初は手紙で知人に呼びかけ、次にネット上でブログとして発信を開始。そしてコープ自然派こうちのチーム活動の中で「勝手に憲法前文をうたう会」が立ちあげられ、訳文が集まり始めました。

▲ お茶とお菓子も準備されて、和気あいあいとしたムードで学習会がスタート
▲ お茶とお菓子も準備されて、和気あいあいとしたムードで学習会がスタート
▲憲法99条から、憲法をめぐる国民と国家の立場を説明する講師の山本さん
▲憲法99条から、憲法をめぐる国民と国家の立場を説明する講師の山本さん

▲子どもたちにもわかりやすい言葉で説明されていきます。
▲子どもたちにもわかりやすい言葉で説明されていきます。
▲本になった「日本国憲法前文お国ことば訳」。全国の猫たちの平和な表情にも癒されます。
▲本になった「日本国憲法前文お国ことば訳」。全国の猫たちの平和な表情にも癒されます。

5年かけて、やっと20県ほどのお国ことば訳ができたころ、全国新聞に取り上げられ、出版社から連絡が。コープ自然派の仲間たちと一緒に出版社の人と会うと、「47都道府県が全部集まったら本にしましょう。出版社から有名な人に頼んで方言をそろえるのはすぐできるが、泥臭く5年もかけてやっていることに意味がある」と言われ、それから始まった「全都道府県そろえる」ための裏話は数知れず…。出来上がった本の中では、全国の老若男女が、お国ことばという「自分のことば」で憲法前文を表現しています。中にはもちろん、高知県内外のコープ自然派の仲間のものも。そえられているのは動物写真家の岩合光昭さんによる47都道府県の猫の写真。岩合さんいわく「猫は平和主義者」なのだそうで、土佐弁のページはもちろん山本さんの愛猫です。

 

コープ自然派こうちの吉岡専務は、「『なんだろう?どうなっているんだろう?』から始めて夢を実現させた山本さん。その過程に生協が少しでも関われたことを誇らしく思っています。生協は夢の実現をするところ。ひとりの夢の実現をみんなで応援できれば、と思います。他の人もやってみたいことをどんどん生協に言ってもらえたらうれしいです。」と言います。現在は、生協のチームとしてでなく、個人としてネットを中心に活動を進めている山本さんですが、「やっていると、『国って何?』『押しつけられた憲法って?』といろんな疑問が出てきました。知りたいことがたくさんあったとき、生協のチーム活動にどれだけ助けられたか。生協がなければできていないこともたくさんありました。」と話していました。


これからは、お国ことばの憲法をその県の人に読んでもらい、「ボイス版」としてインターネットで聞けるようにしたいそうです。すでに集まり始めている「ボイス」の中には、震災と放射能に立ち向かっている福島の方が読んでくれたものもあります。「人はまちがいをするもの。国もまちがう。まちがったまま突き進まないために立ち戻る『決まり』、それが憲法。国民はまちがいを正すために憲法を使っていいのに、そのことを私たちは教えられていない。今、福島の人たちは憲法13条の『生存権』を脅かされている。きっと、今の状態が憲法違反であるという訴えが起きるはずです。」という山本さん。

講演の最後のスライドには「次はあなたの番ですよ」という文字が大きく映し出されていました。もちろん「あなたもお国ことば訳に参加して」ということですが、私には、山本さんが、「さあ、あなたも夢を実現して」と、みんなの背中を押しているように思えました。

(S)